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三国
   
虚子在す 月の三国に実花来よ
森田愛子


日本海に浮かぶ美しき月に、師・虚子を想う。

 月は物寂しさを感じる反面、明日への活力のきっかけにもなる。三国の俳人として有名な森田愛子の生涯は、病弱で30年と短かいものの、日々すべてのものを活力にして、俳句と共に生きた女性だった。
 三国の夜は、港として賑わう日中と違い、かなり静か。月明かりだけが妙に青白く、真っ黒な日本海がそれをさらに際立たせている。その光景は2階の部屋から眺める愛子にとって、絶好の題材の一つとなったのだろう。そして師の高浜虚子の訪問に伴った句会や食事会を楽しみながら、「師の虚子が来られた日の三国の月は、本当に美しい。実花(山口誓子の妹である下田実花)、あなたも来てはどうですか」と詠む愛子がいる。病の床にあった彼女だが、三国の風土と師の愛情、そして仲間の友情が、彼女を俳人として活躍させたのだろう。
 夜、月を見て暗く病に憂うのではなく、逆に俳句を詠み次への活力に変えていった愛子。生涯は短かったけれど、生きるという執念と俳句への愛情、そして三国という土地への愛着は、今も月のようにいつまでも美しく輝いている。


人物紹介
森田愛子 (一九一七〜一九四七)
三国の豪商・森田三郎右衛門と名妓との間に生まれた。病弱な為、鎌倉七里ヶ浜へ療養に行き、そこで伊藤柏翠に出会い俳句を始める。同時に高浜虚子とも出会い、彼女の生涯の師となる。三国に戻り療養を続けながら詠んだ俳句は、抒情的な句風と言われている。美人薄命的な森田愛子の面影は、虚子の小説『虹』『音楽は尚お続きおり』などで知ることができる。『森田愛子全句集』もある。

名所を巡る

師は高浜虚子だが、彼女に直接俳句を勧めたのは、鎌倉の療養先で知り合った伊藤柏翠。彼は虚子の愛弟子で、後に彼も三国に住まいを移し、愛子とその母と暮らすようになった。その頃虚子も何度か三国を訪れている。(坂井市三国町神明)

東尋坊の歌碑
東尋坊にある愛子、虚子、柏翠の句碑。虚子の小説『虹』は三国が舞台の、愛子を主人公にした短編もの。(坂井市三国町安島)

九頭竜川河口
福井を代表する河川、九頭竜川。和泉村の九頭竜湖から数々の市町村を通り、日本海へと流れていく。写真は河口にあるヨットハーバー。(坂井市三国町宿)