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東尋坊(坂井市三国町)
   
満開の海の岩岩船遊び
山口誓子


本物の自然を楽しめる面白い奇岩・東尋坊。

 豪快で迫力ある奇岩絶壁の東尋坊は、世界的にも貴重な観光名所といえる場所。日本海の荒波で作られた絶壁を上から眺めるのもいいが、遊覧船に乗り、下から絶壁を見上げるのも、また違った迫力を味わえるというものだ。
 学生の頃から幾度となく福井へ遊びに来ていたという山口誓子も、観光がてら東尋坊周辺を訪れている。ワカメを採る海女たちを眺めて春の訪れを喜んだり、海水浴の面 白さを満喫したり……。そして東尋坊では当然のことながら、その奇岩に驚嘆したのだろう。「花々が咲き乱れて満開になるように、いくつもの波が奇岩にうち寄せてくる。その様子を遊覧船から眺めるのはなんとも素晴らしい」。
 しかし東尋坊周辺の素晴らしさを歌いながらも一方で、数多くの人が訪れる観光名所であるため東尋坊の美観が損なわれている、といったような反論もしている。作歌活動の中で、一時期は人工的な素材をベースに、虚無感漂う句風に傾いていたが、いつしか芭蕉のように、自然を歌うことが多くなったという誓子。彼にとって、観光客で賑やかすぎる東尋坊は、どことなく人工的に映ってしまったのかもしれない。だから誓子は、海と岩の間の船遊びで、本当の自然を満喫して、その面 白さを句に詠んだのだろう。


人物紹介
山口誓子 (一九〇一〜一九九四)
京都生まれ。小学生の頃から俳句に関心を持ち、さまざまな句会に参加。高校時『ホトトギス』に投句、本格的に俳句を学び、大学で高浜虚子の指導を受ける。昭和初期には人工素材を句材にしたり、詩の技法を取入れたりした。昭和10年頃『ホトトギス』の写生尊重の句風を批判する運動に参加。昭和16年頃からは芭蕉に親しみ、自然を詠嘆的に歌うようになる。句集は多数。昭和62年日本芸術院賞受賞。

名所を巡る

東尋坊は国の名勝・天然記念物に指定されている。海面から最も高い絶壁の高さは約50m。ところどころにライオンの形のライオン岩や軍艦岩などの奇岩がみえる。(坂井市三国町安島)

山口誓子歌碑
荒磯遊歩道の句碑。この他に「春潮の深きにあれば海女あはれ」などもある。(坂井市三国町陣ヶ岡)