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虚空遍歴コース 一覧へ戻る戻る次へ

山本 周五郎
   
浄瑠璃の世界を生きた芸術家の激しい一生。

 江戸の浄瑠璃作家としての才能に恵まれながらもなお、その本質を追求する為、大阪への旅にでた冲也。しかし行く先々で失敗や失態を繰り返し、酒を呑むことでしか自分を慰められなくなる。そして再起を図ろうと金沢へ向かう。その道中、南越前町の日野川をみて「おれはこの川が好きだ(中略)おれにふるさとというものがあるとすれば、ここだという気持ちさえするんだ」とつぶやく。
 宿が並ぶ街道沿いを少し離れ、ゆっくり流れる日野川の土手にたたずみ、辛く苦しかった旅を思い出す。東西を山に囲まれ、その間を流れる水面 を眺めることで、彼の病んだ精神と体が癒されていく。
  今庄の風土と日野川には、彼が江戸では決して味わえなかった、ふるさとの温かさが充分すぎるほど溢れていたのである。
本の紹介
虚空遍歴(上)・(下) (新潮社・(上)1992年・(下)1994年発行)
江戸の人気浄瑠璃作家、冲也は”裕福な家で育った彼に、本物の浄瑠璃は語れない“との批判を受け、人生修行も兼ねて大阪へと旅にでる。道中の様ざまな体験で人間的にも大きくなるが、次第に体力、精神を病み始めてしまう。全体的に冲也の行動が中心だが、同行する女性、おけいの”独白“の部分も、物語をより奥深いものにしている。
作者紹介
山本 周五郎
(やまもと・しゅうごろう)
明治36年(1903)山梨県生まれ。歴史の中や現代の庶民を主人公に数々の小説を描き、『赤ひげ診療譚』など劇化・映画化された作品も多い。また現在でも優れた文芸作品(小説)に贈られる”山本周五郎賞“としてその名を残す。代表作は『夏草戦記』『樅ノ木は残った』『季節のない街』など。本書は昭和36年から約2年間、「小説新潮」に連載された。昭和42年64歳で死去。


南越前町の日野川
山々に囲まれた南越前町内をゆっくり流れているのが日野川。主人公、冲也は日野川との最初の出会いで“おれのふるさと”といい、金沢からの帰途、2度目には“古い友達”と表現している。(南越前町)

旧今庄宿
江戸時代、多くの宿が並び、賑わった街道の宿場町。老舗の酒店などが残っている。(南越前町今庄)

旧鯖波宿
冲也が旅の途中で出会った画家の墓がある場所として登場する。日野川と国道365号線、JR北陸線が並行して走っており、春には桜が咲き乱れる。(南越前町鯖波)

文学碑
昭和36年と38年に山本周五郎は今庄を訪れている。特に38年は、自らが再び『虚空遍歴』の跡を訪ね歩いた。(南越前町今庄)


孫谷
滋賀方面から来ると孫谷は今庄宿の入口となる。栃ノ木峠を抜け、板取宿を過ぎると見えてくる。(南越前町孫谷)