竹人形師とその妻の悲哀の物語。 日野川支流を登りつめた山奥にある、竹神という集落に住む竹細工師・氏家喜助。そこに嫁いできた、玉 枝。玉枝はかつて、父の遊郭遊びのなじみの女郎であった。しかし、喜助は、彼女を母親として慕い抱こうとしない。そんなもつれから、玉 枝は一度だけ昔の客と過ちを犯し、子を宿してしまう。その後、玉 枝は病気で亡くなり悲観のうちに喜助も命を落とす……。 ストーリーを端的に記すとこうなるが、作品の特徴は読み出すとまず頭に浮かぶ、描写 の素晴らしさにある。ストーリーに反して文面から感じる温かさはその表現によるところが多い。登場する越前竹人形などの描写 も繊細で、実際に目に浮かぶくらいである。 作品に登場するシーンを歩くと、そこには竹神村に住む喜助と玉 枝とともに、昭和初期の福井の人々の暮らしが見えるのではないだろうか。 |  越前竹人形 (中央公論社・1972年発行) 丹南地域を流れる日野川の支流を上り詰めた山奥にある、竹神という集落に住む竹細工師の喜助。父を亡くして間もないある日、父を訪ねてきた芦原の遊女、玉 枝に惚れこみ妻として迎えるが……。谷崎潤一郎にも絶賛された水上文学の代表作とも言える作品。主人公の父、喜左右衛門は著者の父親をモデルに描いたとされている。 |  水上 勉 (みずかみ・つとむ) 大正8年(1919)福井県大飯町生まれ。11才の時、僧侶の修業に京都へ。立命館大学中退。病気で帰郷、療養生活の中で文学書に熱中、文学の道を志す。様々な職業を経ながら執筆。『霧と影』で作家としての地位 を確立。直木賞、菊池寛賞をはじめ多数の賞を受賞。『越前竹人形』『飢餓海峡』などで水上文学といわれる独自のカラーを生み出した。 | | |