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津村 節子
   
焼きものに生きる女性の人生を描く。

 『炎の舞い』の舞台となっているのは、丹生郡越前町(旧織田町と旧宮崎村)で、そこで生まれた主人公が、紆余曲折を経て自分の本当にやりたいこと=焼きものを見つけ、歩んでいくというものである。
 この作品で興味深いのは、ストーリーもさることながら「水谷」という人物が建設を進めている資料館、主人公の祖父が作ったとされている陶板など、登場している人物や、越前焼の歴史、建物など実在しているものが多いという点だ。旧織田町や旧宮崎村の自然も細かく描写 されている。
 また、現在の越前焼は古くからの技法はもちろん、様々な新しい試みもされているほか、女性の陶芸作家も多く存在している。この辺りもストーリーと相まっているのが面 白い。実際には、他の産地も参考にされているが、主人公になったつもりで歩いてみると越前焼もまた、違ってみえてくるのではないだろうか。
本の紹介
炎の舞い (新潮社・1975年発行)
越前の焼きもの師の孫として、丹生郡越前町織田に生まれた主人公・琴代。学生である彰二と恋に落ち東京へと駆け落ちをするが、東京で偶然出会った一人の男性を通 じて、再びやきものに魅かれ郷里にもどり、新しい越前焼と自分自身の人生を模索する。主人公・琴代の祖父・庄右衛門は、実在したおた焼の名工故北野七左衛門氏をモデルにしている。
作者紹介
津村 節子
(つむら・せつこ)
昭和3年(1928)福井市生まれ。学習院女子短期大学卒業。父親は市内で絹織物業を営んでいたが、10才の時、東京へ転居する。夫は作家の吉村昭氏。昭和39年『さい果 て』で第11回新潮社同人誌賞、昭和40年『玩具』で芥川賞受賞。『流星雨』で女流文学賞も受賞。福井県を舞台とした長編小説として『炎の舞い』、『遅咲きの梅』、『白百合の崖』、『花がたみ』の”ふるさと4部作“がある。


越前町織田
作品の舞台となっている越前町織田は、四方を山に囲まれ、人口約5000人の山村。昭和47年までは、電車も走り、この地方の商業における中心的な町であった。現在では、自然を活かしたアウトドア施設を始め、太鼓の町として知られている。

陶板
公民館の新築にと作られた、庄右衛門の陶板。越前町織田の中央公民館ロビーには、モデルとなった故北野七左衛門氏制作の陶板が飾られている。(越前町織田)

おた焼
六大古窯として伝わる「おた焼」は素朴な味わい。越前町織田内では「よって駅ね」や、「観光物産館」で展示販売されている。現在、総称として「越前焼」という名前が一般 的だが、物語中のような「おた焼」など窯元や地域により名称は若干異なる。(越前町織田)

剱神社
県内でも有数の神社。越前国二の宮であり、歴代の国主、領主らに崇敬を受け、保護されてきた。文中でもよく登場している。(越前町織田)


水野古陶磁館
越前焼の歴史資料やその破片などが収蔵されている水野古陶磁館は故水野九右衛門氏が個人で作り上げた、貴重な資料館。資料は現在、陶芸館内にそのコーナーが作られ展示されている。(越前町宮崎熊谷)


越前陶芸館
衰退していた越前焼を福井県の特産工業として振興し、1970年に県と越前町(旧宮崎村)によって作られた。施設内の陶芸館には古越前をはじめ、越前焼が展示されている。(越前町宮崎小曽原)