白い雪と赤いピッツェリア、地の野菜を生かしたピッツァを食べるの巻
雪の中でピッツァを食べたのは、生まれてはじめてである。遠く生誕地に住むナポリの人も、まさか雪の中でピッツァを食べている人種がいるとは、夢にも思わないだろう。「こんなところに、本当にピッツェリアがあるんですか?」
雪の中でその店は、村落も少ない、雪原の中にぽつねんと建っていた。
真っ白な風景の中で、店名由来の赤く塗られたピッツァ釜が、温かみを放っていた。

こんな雪の日に、お客さんはいるのだろうかと店内に入ると、なんと平日の昼だというのに、満席である。
これは期待ができるぞと、早速ピッツァを頼む。
まずは基本のマルゲリータだろう。


可愛いピッツァである。
世のピッツァの2/3くらいだろうか。
だからこれは、3口くらいで食べ終えられる。
香ばしく、生地の力強さを感じるピッツァで、小さくとも食べ応えがある。
コルニチョーネ(縁)も、ふっくらと膨らんでいるというより、石窯パンのようで、噛み締めがいがある。
次に一番人気だという、「越前町産原木椎茸とリーフサラダのピッツァ」をお願いした。



上には、グリーンリーフが山と盛られ、生地の上にはチーズと分厚い椎茸が乗せられていた。
地元のリーフだろう。
噛んだ瞬間に、みずみずしいジュースがほとばしる。
そして肉厚の椎茸は、むっちりと葉に食い込む。
むう。
このタイプのピッツァも他にはない。
おそらく、地元のリーフと椎茸を食べて、上に乗せたいとご主人は考えたのだろう。
次は「ラザニア風フジッリ」と、いってみた。



パスタは、幅広のラザニアではなく、ショートパスタのフジッリを使った料理である。
螺旋状のパスタ、フジッリに、ラグー(ミートソース)やトマトソース、チーズがよく絡んで、笑いたくなる。
最後はデザート、「焼きりんごとミルクジェラートのピッツァ」をお願いした。

じっくりと焼かれたグラニースミスが生地の上に乗っている。
凝縮したりんごの濃密な甘酸っぱさと、チーズが合う。
チーズの塩気がさらにりんごの良さを持ち上げている。
そしてアイスを乗せて食べる。
熱々のりんごに、冷たいアイスがからんで、アップルパイと同じく、クセになるなあ。
聞けばこちらのご夫婦は、京都の亀岡でお菓子屋さんを営んでいて、娘が移住されたのに沿って、京都の店を譲り、こちらでピッツァを始められたのだという。
それゆえにりんごのピッツァも、美味しいのだな。
なにか極寒の中で、 焚き火に包まれたような気分となった。
(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。年間700軒ほど国内外を問わず外食し、雑誌、テレビ、ラジオなどで食情報を発信。そのほか虎ノ門横丁プロデュース、食文化講師など実施。日本ガストロノミー協会副会長、日本食文化会議理事。最新刊は「どんな肉でもうまくする。サカエヤ新保吉伸の真実」世界文化社刊。
7年前に小浜地区の仕事を通じて福井の食材の豊かさに惚れこみ、今回の福井各地の美味しいを探す旅のきっかけとなった。