蕎麦屋で出会った、頑固な豆の巻
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「固っ」、
豆を食べ、思わず叫んだ。
煮豆が固い。
「がんこ豆」といって、今庄の伝統料理である。
塩ゆでしてから砂糖を加え、蓋なしで煮詰めると固くなるのだという。
飴色となり、しわが寄った硬い豆をかみしめると、糖分が煮詰まったキャラメル香が後を引く。
やめられない、止まらないである。
白いご飯にも、日本酒にも合う。
これで燗酒やりたいな。


さて、思わずがんこ豆の話から始めてしまったが、ここは蕎麦屋である。
店名は、元々農協の婦人部の方々が始められた所以ゆえの、名前だという。
「おろしそば」は、中細で、シコっとしたコシを持つ。
あまり辛くなく、食べやすい。



一方温かい「おろしそば」は、ほんのり甘みが出て、ねっちりとした食感である。


ここにも福井名物厚揚げがある。
「揚げ焼き」は、よく知る揚げ焼きとは違った。
よく知るそれは、ふわりと軽いが、こちらのそれは、豆腐としての重みがある。
豆感が強く、みっちりと詰まった豆腐が揚げられ、焼かれている。
「豆腐を食べた」という充実感がある。
聞けばこれが本来の福井の厚揚げだという。
豆腐は煮豆腐として料理されることが前提のため、しっかりと凝縮させて作られる。
それを揚げ焼きにしていたのだという。
一丁も食べれば、お腹が膨らむ。
何度も福井に来てても、まだ知らぬ食がある。
福井は深い。


(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。年間700軒ほど国内外問わず外食し、雑誌、テレビ、ラジオなどで食情報を発信。そのほか虎ノ門横丁プロデュース、食文化講師など実施。日本ガストロノミー協会副会長、日本食文化会議理事。最新刊は「どんな肉でもうまくする。サカエヤ新保吉伸の真実」世界文化社刊。
7年前に小浜地区の仕事を通じて福井の食材の豊かさに惚れこみ、今回の福井各地の美味しいを探す旅のきっかけとなった。