今庄の伝承料理の温かさで本来の自分を取り戻す
道の駅ではなく、“土の駅”である。
ここでは、地元のお母さんたちが郷土料理を作り、提供されている。
道の駅のような通過点ではなく、この土地に根ざす恵みを味わってもらいたいという思いが込められている。
主催者の窪田春美さんは、今庄地方に受け継がれる伝承料理を伝える活動をされている方である。
今庄は北国街道の宿場町として栄え、多くの伝承料理が各家庭に伝わっているのだという。
おすすめの料理は、郷土料理九品とご飯、おろしそばがセットになった「土の駅Aセット」である。

料理は右上から、「切り干し大根とにんじんの煮物」「高野豆腐の玉子和え」「すこ」「蒟蒻」「むかごの胡麻和え」「百合根黄金梅和え」「新れんこんきんぴら」「青梗菜」「沢庵煮」である。
どれもご飯を呼ぶ味付けだが、決して濃くない。
優しい調味により、主役である野菜の滋味がしみじみと伝わってくる。
毎日こんな料理でご飯を食べたいと思うのは、都会人のわがままだろうか。
特に驚いたのは「むかごの胡麻和え」である。
むかごといえば、素揚げや炊き込みご飯に使う小粒のものを思い浮かべるが、ここで使われていたのは一瞬お多福豆かと思うほど大きい。
噛めばほっくりとして甘みがあり、胡麻の風味と相まって心が和む。
まさしく“土”が育んだ恵みが生み出した料理である。

ちょうど節分の時期だったので、恵方巻きもたくさん作られており、それをいただくことができた。
胡瓜、玉子焼き、かんぴょうが巻かれたシンプルな太巻きだが、昨今の豪華なものよりも、むしろこうした素朴な味わいの方がしみじみとうまい。
何切れでも食べられてしまう。
「デザートに干し柿はどうですか」と、吊るし柿もいただいた。
吊るし柿とは、旧今庄町(現・南越前町)に450年前から伝わる伝統食である。
「長良」という品種の渋柿を使い、干した柿をナラやケヤキの煙でいぶして乾燥させる。
冬の間は日光では干せず、囲炉裏の上に吊るしていぶしたのが始まりだという。


(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。年間700軒ほど国内外を問わず外食し、雑誌、テレビ、ラジオなどで食情報を発信。そのほか虎ノ門横丁プロデュース、食文化講師など実施。日本ガストロノミー協会副会長、日本食文化会議理事。最新刊は「どんな肉でもうまくする。サカエヤ新保吉伸の真実」世界文化社刊。
7年前に小浜地区の仕事を通じて福井の食材の豊かさに惚れこみ、今回の福井各地の美味しいを探す旅のきっかけとなった。