あぶらのおおいホルモンというネーミングに惚れたの巻

看板には、「焼肉 酒 おでん」とあった。
その瞬間心の中で「焼肉 酒 おでん?」と繰り返し、思った。
こりゃ知らない街で直感で店を選択する、孤独のグルメの井の頭五郎なら絶対入るに違いない。
店に入ると、カウンターの上でおでん鍋が湯気を立てていた。
だが今日は焼肉、ホルモンだと、決めてきたので、初心を貫こう。


メニューを見れば、そそられる文字が踊っているではないか。
さあ、なにを食べようか?
「鉄板」と書かれた焼肉メニューには、ホルモン、牛レバー、ミノ、サガリ、カルビ、牛タン、牛ツラミなど部位が並んでいる。
鶏も豚もある。
だが一際、目を引いたものがあった。「あぶらのおおいホルモン」である。
通常のホルモン750円に対し、1100円と強気である。
福井ならではの「おやどり」も頼もう。
しばらくして女将さんが熱々の鉄板を運んできて、卓上のカセットガスコンロの上に置いた。

「はい、ぶちゅぶちゅです。」
女将さんが謎の言葉を発する。
湯気が猛然と上がる。
鉄板の上ではもやしとキャベツ、おやどりと脂の多いホルモン(つまり牛の開いた小腸ね)が踊っている。

これをニンニク風味の味噌ダレをつけて食べるのであった。
これがたまらない。
脂のあまみに甘辛いタレをつける。

こりゃ、大至急ビールだな。
食欲のツボを正拳で突いてくる。
もりもり食欲が湧いてくる。
他の肉も食べたかったが、常連のススメでホルモンうどんをお願いした。


つゆのうどんかと思いきや、焼きうどんである。
再び熱々の鉄板が運ばれ、ホルモンミックスとうどん、野菜が音と湯気を立てている。
これがまた箸が止まらない。
帰り際に聞いた。
「ぶちゅぶちゅってなんですか?」
「私らの子どもの頃は皆、脂の多いホルモンをぶちゅぶちゅって呼んでたんですが、それじゃお客さんにわからんだろうと、こう書きました。」
ちなみに「ホルモン」は、牛と豚のミックスだという。
聞けば創業約65年。
日本中で、様々な内臓焼肉を食べてきたが、こんなところもあるのだな。

(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。年間700軒ほど国内外を問わず外食し、雑誌、テレビ、ラジオなどで食情報を発信。そのほか虎ノ門横丁プロデュース、食文化講師など実施。日本ガストロノミー協会副会長、日本食文化会議理事。最新刊は「どんな肉でもうまくする。サカエヤ新保吉伸の真実」世界文化社刊。
7年前に小浜地区の仕事を通じて福井の食材の豊かさに惚れこみ、今回の福井各地の美味しいを探す旅のきっかけとなった。