豪胆かつ繊細、独創的かつ不動。食材の良さを知り尽くした料理人が作り上げる、春の味わい。

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「いらっしゃいませ」。
店に入ると、宮崎さんの快活な声に出迎えられた。席に座ってくつろぐ。

やがて宮崎さんは、串打ちした白子を炭火で焼き始めた。
白子は白い汁に入れられ、紅白の結びや海苔を乗せたお椀として登場した。

「黒龍酒粕汁 天然虎河豚白子 焼き胡麻豆腐 三国安島産・石森さんが獲った天然岩海苔」 である。

香ばしい酒粕汁の滋養が、口中を、喉を、胃袋をゆっくりと温めていく。
その中で白子の妖艶な旨みが広がり、海苔と胡麻の香りが交差する。
一口で冷え切った心は温められ、福井の里と海の恵みが押し寄せた。

二皿目は八寸である。

能登赤海鼠 発酵金柑おろし酢掛け 河野岩もずく越前町ズワイ蟹コロッケ(蟹のアメリケーヌソース)
にぎりこ醤油漬け(船上で塩漬けした数の子で、通常の数の子よりえぐみが少なく、卵本来の風味とパリッとした歯ごたえがある)
天豆翡翠煮、唐墨、自家製半生バチコ炙り、胡桃蜜煮、クワイチップ、蕗の薹天麩羅、黒豆、稲穂

二月頭なので、まだ正月の面影を残した八寸である。
里と海の珍味が、「飲め飲め」と迫ってくる。
これだけで二合はいけるなあ。

特に気に入ったのは海鼠と発酵金柑で、練れた酸味が丸く、海鼠の“日本酒喚起力”をさらに高めてくる。

節分が近いこともあり、恵方巻きにちなんだ一品。

「富山氷見本鮪漬け太巻き 美山産 河内蕪酢漬け」

大口を開けて頬張り、本鮪のヅケ鉄火の幸福を味わう。

お造り一品目は、
「天然ふぐ あん肝ポン酢」

福井のフグは全国的に見ても優れている。
アスリートの魚らしい純粋なうまみが、濃縮している。

その旨みを、ただポン酢につけるのではない。
あん肝を溶かした“ポン酢ムース”を絡めて食べる のである。
まことにけしからん。危険な味だ。

二品目は
「小浜産メジマグロ藁焼き 卵黄醤油 石森さんの岩海苔佃煮」

メジマグロは皮と皮下がうまい魚。
ゆえにカリッと焼けば魅力が増す。
皮の痛快な食感、その下に潜む濃密な旨み、そして滑らかな身を楽しんだ。

椀ものは、「高浜産クエ葛たたき 地物小蕪 菜の花」

凛々しいクエの肉体が、清楚な汁の中で際立つ。
やがて汁にクエの滋味が溶け込み、味が膨らんでいく。

焼き魚はメダイである。
割烹で出されるのは珍しいが、日本海産の大型メダイは脂がのり、実にうまい。

宮崎さんはこれを、「富山氷見メダイ 実山椒味噌祐庵焼き 金沢春菊胡麻和え」として供した。

柔らかい身を噛むと、じんわりと脂の甘みが広がる。
その甘味と味噌の甘味が呼応し合い、実山椒がきゅっと引き締める。
心憎い焼き物であった。

水の入ったガラス鉢に泳ぐ小魚——本モロコ。

揚げて南蛮酢餡をかけ、うるいを添えて供された。
小さいながらもふっくらとした食感に、甘酸っぱい旨みが染みた深い味わい。

続いて、池田町の野鴨鍋。姉崎椎茸園の原木椎茸、三関芹、湯葉も添えて。

口に入れれば、野生鴨ならではの鉄分が躍動する。
血が沸き立つような興奮を、芹と椎茸がそっと鎮め、また鴨肉に箸が伸びる。

十皿目のご飯は 河野産サワラ。

焼きサワラと池田町のクレソン、むかご、長芋クルトンを混ぜ込んだご飯である。

米の甘みとサワラの甘みが溶け合い、時折クレソンの爽やかさが香る。
米と魚が丸く一体化した、豊かな美味しさに満ちていた。

最後は、マスカルポーネアイス りんごと金柑コンフィチュール、紅まどんな ソーテルヌワインジュレ ピスタチオ。

割烹にしては一捻りのある洋風の甘味。
季節の恵みに敬意を払い、豪快かつ繊細に料理される宮崎さんの心技に酔いしれた夜であった。

豪胆かつ繊細、独創的かつ不動。食材の良さを知り尽くした料理人が作り上げる、春の味わい。
マッキー牧元
(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。年間700軒ほど国内外を問わず外食し、雑誌、テレビ、ラジオなどで食情報を発信。そのほか虎ノ門横丁プロデュース、食文化講師など実施。日本ガストロノミー協会副会長、日本食文化会議理事。最新刊は「どんな肉でもうまくする。サカエヤ新保吉伸の真実」世界文化社刊。
7年前に小浜地区の仕事を通じて福井の食材の豊かさに惚れこみ、今回の福井各地の美味しいを探す旅のきっかけとなった。

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