郷土食文化の責任を担って福井出身の料理人が生み出す、京都料亭仕込みの滋味深き料理

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古き良き時代の面影と、見事な大工仕事の精緻を見せる建物が、市内の一角にひっそりと建っている。
50年前に閉店したという堂々たる料亭が、そのまま時を止めたように静かに眠っているのだ。

50年前とは思えないほど保存状態は良好で、昔の大工技術の精妙さと遊び心が随所に見られる。

その建物の一角に、昨年11月12日、福井県名田庄出身の友本尚兵氏が割烹を開いた。

友本氏は京都「菊乃井」出身。名店で培った技術と哲学を、福井の食材に吹き込み、独自の世界を表現する。

2月にいただいたコースは以下の通りである。

■先付

福茶(炒り豆・結び昆布・梅干)でゆっくりと喉を開き、先付は「フグ白子の飯蒸し」
白子の濃密さに、金柑の香りと甘酸味が寄り添う優美な味わい。

■八寸

五目煮、鱈子の落雁、ふわりと蟹の旨みが広がるズワイ蟹の稲荷寿司、節分にちなみ鰯の梅煮に柊、土佐酢のジュレとなまこの鬼おろし和え。
五目煮の人参・蒟蒻・牛蒡が極細同寸に揃えられ、職人技の美しさが際立つ。

椀物(薄氷仕立て)

薄切りにして氷に見立てた聖護院かぶらの向こうに春が透ける。
椀種は炭火焼きのキンメダイ、椀妻に菜の花、吸い口に柚子。
昆布・鰹にキンメダイの頭と骨で取った出汁を合わせた強い旨みのつゆが、寒さに凍えた心まで温めてくれる

お造り

「三方五湖の寒フナ」。品のある脂の甘さが静かに舌に乗ってくる。
 続いて「ぐじ麹漬け」は、口中でねっとりとまとわりつく色気がたまらない。
 さらに、「炙りブリ」。鰤しゃぶを湯に通さず表現した一皿で、染めおろしと炒め九条ねぎ、生姜がブリの凛々しい旨みを引き立てる。

 ■焼物

「白甘鯛の早瀬浦 酒粕漬け焼き」。炭火で焼いた蕪を添えて。
 酒粕が白甘鯛の甘みをさらに引き出し、滴る蕪の凝縮したエキスと交互に味わうと、福井の豊かな情景が広がる。

和え物

「春の白和え」。自家製の干し柿、牛蒡、うるい、人参、芹。
 寸法と量のバランスが的確で、しみじみとした美味しさがある。

■炊き物

「アンコウの海苔鍋」。三国の海女が採った澄んだ風味の岩のりとアンコウ。
 ひと口食べた瞬間、海底へ連れて行かれるような清澄な世界観。あん肝味噌も秀逸。

■ご飯

白ご飯は新庄産いちほまれ。
お供は、小蕪の糠漬け、白菜の地芥子和え、ぶり大根、へしこ、合わせ醤油に数日漬けた卵黄。
それぞれで白ご飯を楽しむ幸福に浸る。

留椀は味噌汁ではなく、カリフラワーのすり流し。季節の野菜を使う姿勢が素晴らしい。

水物

紅ほっぺのミルクアイス、志野さんの塩を加えた煮小豆。

友本氏の確かな技と感性に裏付けられた福井の食材が、胸にじんわりと迫ってくる。

郷土食文化の責任を担って福井出身の料理人が生み出す、京都料亭仕込みの滋味深き料理
マッキー牧元
(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。年間700軒ほど国内外を問わず外食し、雑誌、テレビ、ラジオなどで食情報を発信。そのほか虎ノ門横丁プロデュース、食文化講師など実施。日本ガストロノミー協会副会長、日本食文化会議理事。最新刊は「どんな肉でもうまくする。サカエヤ新保吉伸の真実」世界文化社刊。
7年前に小浜地区の仕事を通じて福井の食材の豊かさに惚れこみ、今回の福井各地の美味しいを探す旅のきっかけとなった。

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御食國 温 

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