長年培ったフランス料理の技と感性で、福井食材から胸を打つエレガントを紡ぎ出す。
リバージュアケボノホテルの2階に、昨年開店したフランス料理店である。
シェフは46歳の松塚高澄氏。料理人として最も勢いがある年代だろう。
福井の山村で育ち、東京都内の会員制フランス料理店に5年間勤務。その後渡仏し、フランス南東部・ニースのミシュラン掲載レストランで修業を積んだ。
帰国後は福井県内の式場レストランで6年間料理長を務め、さらに京都や名古屋の著名ホテルで料理長を経験して、福井に戻られたという。
46歳という、技術も知識も一層充実した時期に、新たなレストランのシェフとして、再び輝きを放っている。
昨今は若いシェフの独立も多いが、安定感ある年齢での就任を歓迎したい。
「大野きのこと地鶏スープ」
パイを割ると、きのこの香りがふわりと立ち上がり、顔を包む。
地鶏のフォンを土台にしたスープは、茸の香りとうまみが溶け込み、冬の寒気にさらされた体と心を温める。


「紅ズワイ蟹と福井県山内かぶらのババロワ、池田町産クレソンのクーリー」
ズワイガニでかたどった円筒の上にかぶのムースが盛られ、振り柚子が香る。
周囲には味の濃い冬トマトのソースが流されていた。
かぶの甘さと締まった蟹の甘みが響き合い、うっとりとする。
エレガントな時間が流れる。


「白子のムニエル 焦がしネギとトリュフの香り & 鱈とじゃがいものパルマンティエ」
右手の皿では、焦げる一歩手前まで揚げたネギの中に白子が忍び、下にはトリュフの微塵切りが隠れている。
白子のねっとりとした色気あるうまみに、ネギの香ばしさと甘み、妖艶なトリュフが重なり、ときめく味わい。
左手には、精妙に20層を重ねた鱈とじゃがいものミルクレープ。
鱈の朴訥とした旨みと、素朴なじゃがいもが共鳴し、素直においしい。
奥にはガリのようにリフレッシュさせる、5種類のハーブサラダ。


「若狭カレイのアラヴァプール 縮みホウレン草をまとわせて」
ほうれん草にナイフを入れれば、しとやかなカレイの肉質が姿を見せる。
80度で15分蒸したという、身質に寄り添ったキュイソン。
ソースは、ほのかにクミンが香るヴァンブランソース。
美しい酸味がカレイの甘みを引き立て、フランス料理のエレガンスを堂々と受け止めた一皿。


「パン」
オリジナルの、今庄が誇る自家製いぶし柿入りバンド・カンパーニュ。
これがまた良い。
ねっちりとした糖度の高い干し柿と小麦の豊かな香りが混じり合う。

「福井の地酒を使ったシャーベットとジュレ」
飛鳥井の純米原酒を使ったという。
すっきりとして、米の甘みが生きている。


「厳選国産牛フィレ肉の炭火焼き ビーツと果実のピュレ シンプルなボルドレーズソースで」
付け合わせは、カシス、ビーツ、舞茸、じゃがいも、たらの芽。
牛肉は、三国近郊の農耕地で赤牛を放牧肥育するサンビーフ斉藤牧場のもの。
福井で赤牛を放牧で育てる農場は他になく、「越前福牛」として出荷されている。
くどさのない清らかな味わいで、噛むほどに旨みが深まる。
目を閉じれば、三国の澄んだ空気の中で草をはむ牛たちの姿が浮かぶよう。
若狭牛もよいが、私はこちらに惹かれた。
できれば次は500gほどの塊で焼いていただきたい。
噛むたびに、そんな欲が膨らんでいく。



最初に**「小さなプレデセール」**が運ばれる。
カクテルグラスに重ねられ、下からジャージー牛のパンナコッタ、清見オレンジ、パッションフルーツ、黄金梅の泡の構成。
異なる酸味と甘みが織りなす、素敵な時間。


続くメインデセールは 「オペラ」。
「日本のオペラは軽いものが多い。私はオリジナルである『ダロワイヨ』と同じものを作りたかった」とシェフは語る。
シェフの出発点がパティシエだったからこそ、その思いは強いのだろう。
ゼラチンを使わないオペラは濃厚で、王道の風格。
上の照りを出したグラサージュも完璧で、正式な7層が精緻に組み上げられている。
これまた完璧なカヌレを従えた、見事なデセールであった。




お店の場所はこちら
Fukui French Aujus(福井フレンチオージュ)
〒910-0006
福井県福井市中央3丁目10−12 本館2F
TEL:0776-22-1000
(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。年間700軒ほど国内外を問わず外食し、雑誌、テレビ、ラジオなどで食情報を発信。そのほか虎ノ門横丁プロデュース、食文化講師など実施。日本ガストロノミー協会副会長、日本食文化会議理事。最新刊は「どんな肉でもうまくする。サカエヤ新保吉伸の真実」世界文化社刊。
7年前に小浜地区の仕事を通じて福井の食材の豊かさに惚れこみ、今回の福井各地の美味しいを探す旅のきっかけとなった。