福井の和食 〜禅の精神と食〜
この動画はミラノ万博で放映されたものです。
典座教訓
和食の原点を探っていくと、時代ごとに中国から日本に入ってきていることがわかります。 平安時代には唐の影響を受けた貴族の大饗(だいきょう)料理がありました。 揚げ物は中国から入ってきたようで、平安時代には唐揚げ、唐煮、唐菓子といったものが食膳にあがっていました。しかし、それは料理というには程遠い、味気ない料理でした。
それが劇的に変化したのが、鎌倉時代に禅宗が入ってきてからです。 精進料理は、 仏道で食する料理をいい、「不殺生」の教えのもと菜食になっています。禅宗には、食事の支度や農作業などを作務とする修行があります。
精進料理
永平寺の精進料理は、寛元二年(1244年) 道元によって大本山永平寺が福井の地に創建されたところから始まります。 道元は修行をするうえで、 食事を世話する典座の職責を明らかにし 「典座教訓(てんぞきょうくん)」 を著しました。 その中に「三徳六味」を調える精進料理を作るための方法が記されています。 その基本は「食材を大切に調理し、相手に供すること」、食材に対しても、食べる人たちに対しても「おもてなし」 を大切にし、万物に感謝することです。生活の中に修行を取り入れた曹洞宗は民衆に受け入れられやすく、 典座教訓の教えも浸透していったと考えられます。
和食の原型となる精進料理をつくり続けている大本山永平寺のある福井の食を知ることで和食の原点が見えてくるのです。
和食は時代によってさまざまな変遷を遂げてきました。
平安時代
大饗料理…唐文化の影響を受けた貴族料理、調理加工はあまりない
鎌倉時代
精進料理…曹洞宗の道元の 「典座教訓」 による調理加工がある
室町時代
本膳料理…武家のおもてなし料理で、 素材を活かした調理加工がある
戦国時代
懐石料理…茶を楽しむための料理で「一汁三菜」 などのルールがある
江戸時代
会席料理…酒や魚を楽しむ宴会料理 「三汁十一菜」 まで多様な配膳
「典座教訓」の教え
道元が禅宗とともに持ち帰った食に対する思想が和食の原点です。
三徳六味
三徳 : 「軽軟」 「浄潔」「如法作」
六味 : 「辛」「酸」「甘」「苦」 「鹹(しおからい)」 「淡」 (素材を活かした味)
料理の基本姿勢としての三徳
「軽軟 (きょうなん)」 見た目はかるく、味はやさしい
「浄潔(じょうけつ)」 清潔でさっぱりしている
「如法作(にょほうさ)」 正しい作法によって作られる
と六味を調えて料理をつくることが、曹洞宗の精進料理の基本です。
「三徳六味」をもってしてもうまく料理ができないのは、 手間をかけることを怠ったからであるという教えをもとに、食事を通して曹洞宗では修行をするのです。 この手間暇を惜しまずに食事をつくる精神はまさしく和食の原点であり、精進料理の神髄なのです。
これらの考えが継承され、現在の和食の基本的な調理法へとつながっていきます。
和食の基本的調理法
五法:「生」「煮」「焼」「揚」 「蒸」の五つの調理法
五味 :「辛」 「酸」 「甘」 「苦」 「鹹(しおからい)」の五つの味覚
五色:「青」「黄」「赤」 「白」 「黒」の五つの食彩