ふくいの旬の食カレンダー 冬(12月〜2月)

ふくいの旬の食カレンダー 冬(12月〜2月)

福井県は四季折々の豊かな食材にあふれています。冬(12〜2月)の時期が旬といわれる食材をご紹介します。

水ようかん

冬限定の庶民の味

みずみずしい食感、 冬に食べるのが福井スタイル。


「水ようかんは冬に食べるもの」。 県外の人たちが驚く福井ならではの独自の食文化です。他県のものとは異なり、総じて柔らかく、 みずみずしいのが特長。 それゆえ痛みやすく、気温の低い冬場が 「旬」になったと言われています。 また、一方でその昔、年末に奉公先から福井へ帰省する際に持ち帰ったあずきで作った「丁稚ようかん」 が起源という説もあります。

雪深い寒い冬、家族みんなでこたつに入り、箱に入った一枚ものの水ようかんを切り分け味わうことが、 福井ならではの冬のぜいたくなのです。



福井県では水ようかんといえば冬に食べるものという独特の文化があります。 福井県内の多数の和菓子屋が製造・販売しています。 寒い冬の季節、こたつに温まりながらぜひご賞味ください。


販売方法も様変わり


本来は漆塗りの木箱に流し込んだものを、買う人が欲しい分量だけ竹の皮で包んで持って帰ったり、 自分で容器を持っていき購入していました。 今は紙箱やプ ラスチック容器が主です。

若狭かれい

御食国若狭の至宝の一つ若狭かれいは、天下に知られた 『雲上の珍美』。

かつて帝に食べ物を供することが許された御食国と呼ばれ た福井県若狭。 肌寒さを感じる晩秋の頃より 「若狭かれい (標準和名ヤナギムシカレイ)」が市場に出回りはじめま す。日本近海だけでも40種近くあるカレイですが、その中でも絶品とされ、毎年皇室にも献上されています。


その美味しさは古くから知られていて、江戸時代の書物で 全国各地の名産品を集めた「日本山海名産図会 (ずえ)」では次のように紹介されています。「淡乾の品多しとはいえども是天下の出類、雲上の珍美ともいうべし」 と、 最上級の賛辞を与えられています。



カレイは淡泊で水分が多いので、塩をして天日に干すこと で身が締まって美味しさが増します。 作り方は、新鮮な若狭 かれいに淡塩を施し、 串に刺して、一晩日陰干しにするという単純なものです。 寒風でさ っと干し上げるのがコツで、日によっては半日で仕上げるときもあるそうです。 生暖かい 風では美味しくはなりません。 底びき網漁が始まると、 魚屋などの軒先に吊るされる若狭 かれいの姿が、 冬の訪れを告げる風物詩となっています。 生乾きで柔らかいのが美味。 軽くあぶって食するのが一般です。



地元では「笹がれい」 または 「甘がれい」 とも呼ばれ、 上品な身の甘さが格別です。 特に 秋から冬にかけての産卵前のものは身も厚く、 脂ものって特に美味しくなります。一夜干しされた子持ちの 「若狭かれい」 は、 ピンク色の卵巣が透けてみえて、姿も美しく、お歳 暮など贈答用としても珍重されています。 美味しいのはもちろんのこと、 身の骨離れもよく食べやすいので、 魚食を進める上でも、重宝な魚です。



献上がれい


福井県では昭和60年より、 福井県の特産品である若狭かれいを皇室に献上してい ます。 約3000枚の中から175枚を厳選。そこからさらに75枚にまで選別、15枚ずつ竹かごに詰められ、 5宮家へと 送られます。 選ばれた若狭かれいは25〜30cm、 150〜200gの最高級品です。

越前がに

福井の冬はやっぱりコレ!期間限定の極上の味

冬の日本海。 寒くなるほどに、 脂がのって美味しくなるのが魚介類です。その中で、冬の味覚の王者と呼ばれているのが福井県の特産品、『越前がに』。その味のファンは全国に多数、 食通もその美味しさを認めるほどです。


今回は美味しさの歴史や理由、 地元シェフ考案の『越前がに』メニュー、東京で味わえる飲食店、 通信販売で人気のカニ商品も紹介いたします。『越前がに』の新たな魅力と美味しさを発見し、 ぜひ、味わってみてください。


越前海岸沿岸、 段々畑状の海底がカニ生息の好環境。


"味覚の王者”にふさわしいその味は、一度食べたら忘れらないほどの奥深い旨味があります。

その旨味の背景にあるのは、 素晴らしい漁場の環境です。


期間限定の逸品。 塩と茹で加減が味の決め手。


漁場の環境の良さが美味しさにつながるわけですが、それをさらにレベルアップさせて くれるのが、塩加減と茹で加減です。

地元に伝わる言葉に、 “カニ見十年、カニ炊き一生”があります。 その意味は、カニの目利きが満足にできるまでには十年かかり、 カニを満足に炊き上げる (茹で上げる)のは一 生かかるということ。それほどにカニの取り扱いは難しいということです。 そして茹で上げる職人は、『越前がに』 の王者たる地位を支えている大切な存在ともいえるでしょう。 ちなみに越前海岸沿岸で獲れるカニには3種類あります。 まずは雄のズワイガニ、『越 前がに』 2つ目は雌ガニのせいこがに、 3つ目はズワイガニの脱皮直後の状態である水がにです。それぞれ漁期も違えば、味も独特です。



美味しさは無限大。 地元ならではの味も斬新で新鮮。


『越前がに』の食べ方といえば、 茹でガニがポピュラーですが、 それだけではありません。例えば刺身や焼きガニ、しゃぶしゃぶ 鍋、 炊き込み飯など様々です。 カニそのものが美味しいのですから、 どんな調理方法であっても美味しさに変わりはありません。 むしろレベルアップされているといえるかもしれません。

さらに地元飲食店では、素材を知り尽くした料理人たちのアイデア溢れる料理も大好評 です。 パスタやリゾット、 ステーキなど、 カニの特性を生かした素晴らしい料理が日々、 研究・開発されています。 ぜひ福井に来て、 定番のカニの他、 アイデア料理もじっくり味わってほしいものです。






越前がに(ズワイガニ)


黄色いタグは『越前がに』の証!

このタグは他産地のカニと区別しやすくするため、 全国で初めて採用され、それ以降、他産地でもタグが導入され始めました。 それぞれに色と形が異なり、一目でカニの産地がわ かります。



足の身を味噌の入った甲羅の中に入れ、 すべてを混ぜ合わせて味わってみると...。今まで味わったことのないカニの 美味しさに出会えるはずです。この味に惚れ込み、『越前がに』 のファンになっ た人も数多くいます。



せいこがに(ズワイガニ)


内子と外子をぜひ! 限定2カ月の珍味

せいこがにとは、 海底230m~250m付近に生息する雌のカニで、 体長は約25cm 前後です。

特徴は何といってもお腹の中。 外子と呼ばれる受精卵はプチプチとした食感が美味。 そして内子と呼ばれる濃い橙色の卵巣は、 “赤いダイヤ”とも呼ばれる珍味です。


ちなみにせいこがには、翌年1月10日前後には産卵が始まるため、 漁期もこの頃まで。 11月6日の解禁日から約2カ月間だけ堪能できる貴重な味といえるでしょう。 大きさはもちろん、価格も手頃なので、地元ではせいこがにを好む人が多く見られま す。


鮮やかな橙色の外子。


ほぐしたせいこがにと大根おろし、 味噌を鍋に入れ、 ひたすら煮るだけの料理、 それが 「せいこのせいげ」 です。鍋が煮立ち、 大根おろしの色が変わってきたら 食べごろ。ご飯にかけても、酒の肴にも最適です。 ちなみに“せいげ”とは味噌を入れた鍋のことで、昔から地元に伝わる郷土料理です。


茹でる
茹でる
水揚げされた日の気候や状況に応じて塩や時間を調整して茹で上げます。 その絶妙な塩梅が、 カニ身の甘さを引き立てます。

刺身
刺身
カニ刺しとも呼ばれています。 半透明の生のカニを冷水に数秒間浸すと、カニ身が花開くようにフワッと広がります。 ほんのりとした甘みと潮の香りが堪能できます。
焼く
焼く
カニ脚に切れ目を入れて焼くだけ。 ただそれだけなのに、 茹でガニとはまた違う味が楽しめます。 また活きたカニを丸ごと焼き上げる「丸焼き」も地元では好評です。
丼
炊き立てのご飯の上に、 せいこがにの足の身と内子、 外子をたっぷりのせ、カニミソもスープにしてかけて出来上がり。 芥川賞作家であ る開高健氏が愛し、 “海の宝石箱”と形容した老舗旅館オリジナル料理「開高丼」です。

鍋
茹でた 『越前がに』 やせいこがにの他、魚介類や野菜をたっぷり入れて味わいます。 様々な食材の旨味が染み出た出汁は、ご飯を入れてシメの雑炊に。

若狭ふぐ

養殖の北限地(嶺南地方)で育つ、 とらふぐが美味しい理由とは。

主に食用とされるふぐの中でも最も美味 しく高級品と称されている、ふぐの王様 が“とらふぐ”です。 福井県はとらふぐの生産額全国六位 (平成20年漁業・養殖業生 産統計年報より) を誇る日本屈指の産地で す。福井県で生産されているとらふぐの主 な産地は敦賀市、 美浜町、 若狭町、 小浜 市、高浜町ですが、これらの地は全国で養殖されている場所の中で最も北限の地で す。そんな日本一寒い場所で生産者たちが 丹精込めて育てたとらふぐは、「若狭ふぐ」というブランドで県内はもちろん、京 阪神を中心とした県外へ出荷しており、 高い評価を受けています。


他県に比べてひと味もふた味も違う美味しさを誇る若狭ふぐが育つ一番の理由は、恵まれた養殖環境が挙げられます。 3〜5月の嶺南地方は、雪どけ水により他地域に比べて低水温の期間が長い。 そんな冬の期間の過酷な環境と冬場でも比較的穏やかな波の場所で養殖された若狭ふぐは、身が締まり、旨みを十分に蓄えるのです。


敦賀市色浜で若狭ふぐを養殖している中井さん。 毎年多くの観光客が訪れる敦賀半島の 水島の入り江に養殖場はあります。「自分の目で選び抜いた極上の稚魚を生簀に放し、毎日ふぐの健康状態を見ながら、 最高のエサを与えています。 養殖場は海の中ですから、自然環境に合わせて、エサやりを工夫していますね。水温が下がってくる出荷時期に、最高の若狭ふぐを食べて頂けるように育てます」。


若狭ふぐは、高級魚のトラフグで身が引き締まり甘みがあるのが特徴で11月~3 月がシーズンです。 若狭ふぐは、地元の旅館や民宿、 料理屋さんで楽しむことができます。 冬の期間、 多くの食通たちがこの味を求めて若狭を訪れます。

ふぐの煮付け
ふぐの煮付け
ふぐ料理の定番といえば、 てっさやてっ ちりですが、産地ならではのアイディア 満載のふぐ料理を教えて頂きました。 特に女性の方に好評な一品なのだそうです。骨から美味しいダシが出る、一押しの料理。

若狭ふぐのにぎり
若狭ふぐのにぎり
若狭ふぐのたたき
若狭ふぐのたたき

越前がれい

ブランド化に向けて新しく動き出した越前がれいはこれからが旬です。

福井県では馴染みのある越前がれい (アカガレイ)。産地 である越前町では地がれいとも呼ばれ、 一般家庭でも食され ることが多い人気の魚です。 ちなみに福井県では、一般に焼 き魚と言えば、 焼きがれいや浜焼き鯖のことをさします。 底 曳き網漁が解禁となる9月から漁が始まり、 雪が降る前の11 ~2月頃のものは、 お腹にたっぷりの子 (卵) を持っていて大 変美味です。早朝の漁港には多くの越前がれいが入ったトロ箱がズラリと並びます。 白い身に転々と赤い斑点があることからアカガレイと呼ばれており、 港に並ぶものは特にその赤味が強いのが特徴です。


越前がれいは水深150〜500mの海底に生息し、全長は約 30〜40cm。 身がビシッと引き締まり、 身の中には美味しさがギュッと詰まっています。 日本海はプランクトンが豊富で 美味しい魚が育つと言われています。 越前がれいの味の良さもこの理由からなのでしょう。 淡白な味わいの若狭がれい (ヤナギムシカレイ) に対して、 濃厚な味わいとジューシーさが特徴で、価格も手ごろです。

福井県は慣習的に何か行事があると、 大きめの焼きがれいを食する土地柄です。 天神講では、お正月に天神様の掛軸か木像を床の間に飾り、 焼きがれいを供える風習がある地域も あります。


また、越前がれいを活魚で港に持ち帰り、 活〆の状態で出荷しようとする動きも活発化 しています。これまでは煮付けや焼魚、干物などに調理されていましたが、 活き造りや刺身などでも味わうことができるようになり、より幅広い料理法で越前がれいの美味しさを 提供できるようになりました。現在は地元・越前町にある約10軒の民宿で越前がれいを堪能することができます。 越前がれいの刺身はこりこりとした食感で甘みがあり、 「ヒラメよりもうまい」と評判も上々のようです。


ズワイガニに続くブランド魚とし て期待されている越前がれいは、 鮮度の良いものほど独自のぬめりがあり、赤い斑点が濃く発色します。 比較的どんな調理法でも美味しく味わえ、特に子をたっぷりと抱えた越前がれいの美味しさは格別です。 大小含めた約50隻の漁船は夜中2〜3時頃に港を出発 し、30時間後の朝6時頃に帰港します。 そのまま荷下ろしされ、セリは9時頃から始まります。 活魚のまま持ち帰り、 頭 (首) と尾の部分の神経骨を切断 (いわゆる血抜き) した活〆の状態のものの扱いはとても至難で、 水温が高いと死んでしまうことも多いのだそうです。