清き水が生んだ、滋味深く澄んだスープが心をとらえるラーメン。
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蕎麦もそうであるように、ラーメンもまた水が命である。
この店は、以前は石川県で開いていたが、福井の水質の良さに惹かれて、移転してきたのだという。
今は、県内に二、三店舗あり、どの店も行列の絶えない人気店である。
鯖江店にやってきた。
まずは基本の「煮干し」である煮干の旨みが太い。
太いがいやらしくなく、すんなり出ているそれが醤油の旨みと丸く結びついている
そのスープに絡む細いストレート麺は、しこっと弾んで、ほのかに甘味を伝えてくる。
具では玉ねぎがいい。
シャキッとした食感が、ラーメンを食べる軽快なリズムをつくり出す。
また途中で、煮干しを漬け込んだ「にぼ酢」をかけ、全体の味を締めるのも、おすすめである。
つぎは、「泡白湯トリュフ」といってみた。
トリュフが妖艶な香りを漂わせ、泡のめろやかな口当たりが色っぽさを膨らます。
三つ葉の香りも、きあアクセントになって心憎い。
最後は、鯖江店だけのオリジナルという、煮干白湯をいただいた。
煮干しのうまみがまろやかになつて、これは癖になるコラーゲンの甘みが溶け込んでコクを与え、スープを飲み干したくなる。
しばらく食べ進むと、溶け込んだゼラチン質の関係で、唇がべたベタしてくるのもいい。
どのラーメンにも入る。レアチャーシューもしっとりとして、脂が綺麗である。
すっきりとした食後感で店を出ようとすると、
「ありがとうございました!」
店員の多くが出てきて、見送ってくれた。
サービスがマニュアルを感じずチェーン店なのに、家族経営のような暖かさがある。
それこそがこのラーメン屋の真髄なのかもしれない。
(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。年間700軒ほど国内外を問わず外食し、雑誌、テレビ、ラジオなどで食情報を発信。そのほか虎ノ門横丁プロデュース、食文化講師など実施。日本ガストロノミー協会副会長、日本食文化会議理事。最新刊は「どんな肉でもうまくする。サカエヤ新保吉伸の真実」世界文化社刊。
7年前に小浜地区の仕事を通じて福井の食材の豊かさに惚れこみ、今回の福井各地の美味しいを探す旅のきっかけとなった。