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敦賀で飲むならココ、酒よし、肴や魚よし,大将の人柄よしの三拍子。

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敦賀で飲むならココ、酒よし、肴や魚よし,大将の人柄よしの三拍子。

「今夜飲む店教えてくれない?」そう敦賀の人に聞いたら、まっさきに教えてくれたのが、この店だった。

「創作居酒屋てんてん」は、

連夜満席という人気の居酒屋である。

カウンターが奥に伸び、座敷もある

店内は、満席で30人弱だろうか。

そのすべてのお客さんに料理を作っているのが、大柄で快活な大将である。

カウンターの上には煮付け料理など入った大鉢がずらりと並び、さあ食べろ、

さあ飲めと迫ってくる。

メニューを見れば刺身の種類がすさまじい。かつお、天然寒ブリ、まこがれい、真鯵、とろサーモン、あおりいか、バイ貝、おにえび、〆イワシ、〆コハダ、小鯛笹漬けとあるではないか。

うむ。全部頼みたい。

しかし悩んだ挙げ句「お造り盛り合わせで、今日の美味しいとこ入れてね」

と、頼めば

「はい。お造り盛り合わせ、おいいしいとこいれこんで」と、明るい声で答えてくれる。

メニューはその他50種類以上。

これをお一人で手早くやられているのだから、凄まじい。

お造りを待つ間、鯛の子煮付けと赤ナマコを頼み、燗酒でゆるりと始める。

早くも幸せが忍び寄る。

「お造り盛り合わせおまたせしました」。

やがて運ばれたお造りは、

天然寒ブリとろサーモン、あおりいか、おにえび、まこがれいなどが美しく盛られていた。

それぞれの刺身の切り身は、

包丁の冴えが美しく、食べればどれも魚自体の力がみなぎっていて、みずみずしい。

敦賀の海の豊かさを感じさせる魚たちである。

珍しいのはオニエビだろう。

鬼海老(正式名:イバラモエビ)は福井でも希少とされるエビで、濃厚な甘みがある。

ボタンエビに似ているが、それより甘みがあり、身の弾力も強い。

刺身を楽しんだあとは、この店の名物が「てんちき」といってみよう。

若鶏の半身を揚げたものである。3つにぶつ切りにされたそれにかじりつく。

ああ。この肉を食らう感じがいい。

唇と舌に溢れる肉汁がたまらない。

続いて頼んだ太刀魚の塩焼きやタコの唐揚げも素晴らしく、独自の工夫があるのが憎いね。

ポテトサラダやハムカツなど、大衆居酒屋定番の肴も上等である。

しかし福井に来たからには食べなくてはいけないものがある。

「にしん寿司」と「小鯛の笹漬け」

という郷土料理である。

「にしん寿司」は、北前船が盛んだった江戸時代に、

寄港地であった三国、河野、敦賀地方に伝わる料理だという。

北海道から運ばれた身欠きにしんを、塩漬けにした大根と、水(米の研ぎ汁)に一晩浸けて柔らかくし、洗って切り、大根と人参などを、麹と調味料とともに漬け込んだ「いずし」や「なれずし」の一種である。

乳酸発酵した、柔らかい酸味とともにニシンを味わう。

燗酒が恋しくなる肴である。

続いて「小鯛の笹寿司」は、

お土産で売られ、全国のデパートでも見かけることのある、郷土料理である。

食べたことがある人は多いだろう。

しかし今まで食べた「小鯛の笹寿司」とは、まったく違った。

連子鯛を塩締めにし、甘酢に漬けたものだという。

市販のそれは、締めが強く、味が抜けているが、これには魚体自体の

優しい甘みがあって、エレガントである。

僕は、「小鯛の笹寿司」を食べるためだけにこの店に来てもいい。

そう思うほどの味わいであった。

マッキー牧元
(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。年間700軒ほど国内外を問わず外食し、雑誌、テレビ、ラジオなどで食情報を発信。そのほか虎ノ門横丁プロデュース、食文化講師など実施。日本ガストロノミー協会副会長、日本食文化会議理事。最新刊は「どんな肉でもうまくする。サカエヤ新保吉伸の真実」世界文化社刊。
7年前に小浜地区の仕事を通じて福井の食材の豊かさに惚れこみ、今回の福井各地の美味しいを探す旅のきっかけとなった。

お店の場所はこちら

創作居酒屋てんてん

〒914-0051

福井県敦賀市本町1丁目9-16

TEL:0770-21-4151