ふく旅

駅から登れる静かな絶景|今庄トレッキングと宿場町さんぽ【福井・日帰り旅】

駅から歩いて登れる山があったら、登山のハードルがぐっと下がると思いませんか?
今回、アウトドアショップ「THE GATE MOUNTAIN」の山本店長に聞いた、おススメのポイントへ!
福井県南越前町の今庄駅は、そんな“電車で行ける登山口”のひとつ。駅舎から徒歩15分で静かな山道がはじまり、新緑あふれる鍋倉山・藤倉山をぐるりと巡る約3~4時間のトレッキングが楽しめます。
登山のあとは、歴史ある宿場町「今庄宿」をのんびり散策し、今庄そばを食べ、地元の酒蔵で一本の地酒をお土産に。
今回は、そんな“大人のひとり山旅”を、ふく旅ライターHIROが体験してきました。

駅から登れる静かな絶景|今庄トレッキングと宿場町さんぽ【福井・日帰り旅】

HIR☺︎

福井生まれ福井育ち生粋の福井人。写真歴は20年以上。嶺北奥越を中心に福井県内の風光明媚な名勝奇勝を撮り歩いてます。

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HIR☺︎

「THE GATE MOUNTAIN」山本店長に聞く!今庄の山と町を楽しむヒント

旅のきっかけは、福井市にあるアウトドアショップ「THE GATE MOUNTAIN」の山本店長に話を聞いたことでした。自分も日頃からいろいろと登山の相談をさせてもらっている山本店長は福井の山々を知り尽くしたエキスパートでもあります。

そんな山本店長とお店のイベントで一緒に文殊山を登っている時、「今庄、ほんとにいいですよ。派手さはないけど、静かで、駅から登れて、歴史も深くて…なんだかいい山旅ができると思いますよ」気になる言葉の数々。これはぜひ詳しく聞いてみたい――ということで、あらためてお話を伺いました。

このルートって登山口まで駅から歩けるんですか?
はい、今庄駅からそのまま歩いて15分くらいで弘法寺の八十八ヶ所入り口に着きます。
そこが藤倉山への登山口。そこから鍋倉山を回って戻ってこられる、ぐるり一周のルートです。登山としてはライトな方ですが、静かで、自然が近くて、すごく良い時間が過ごせますよ。
クルマじゃなく電車でアクセスできるのはすごくいいですね!
コースはどっちまわりがおすすめですか?
藤倉山から登って鍋倉山へ抜けていく方が、傾斜が緩やかでおすすめですね。逆に鍋倉山から先に登ると、けっこう急登なので体力的にしんどいかも。

鍋倉側は“お城跡”のあたりを登る形になるんですが、そちらからの登りはちょっと上級者向け。
初めてなら藤倉山から入った方が、ブナ林もきれいに楽しめて、心の余裕も持てると思います。
そのブナ林がとても気になります!
藤倉山から鍋倉山へ抜ける尾根道に、曲がったブナが立ち並ぶエリアがあるんです。
これは雪国特有の風の影響で、雪に押されて幹が曲がるんですよ。そこに春の新緑がかかると、柔らかい光が差してすごく幻想的な雰囲気になります。
5月中旬から6月あたまが、ちょうどブナの新緑のいい時期ですね。秋は紅葉がとてもきれいで、11月中旬くらいが見頃です。
登ったあとの山飯といえば、やっぱり「そば」ですか?
もちろん(笑)!今庄といえば「今庄そば」。
福井駅の有名な駅そばも今庄そばですが、今庄宿の中にも何軒かありますね。どこも個性的で美味しいです。香りが強くて、ちょっと硬め。登山後のそばは格別ですね!
今庄は町も歴史が深いんですよね。
今庄は、かつて越前と若狭をつなぐ交通の要衝だったんです。
木の芽峠(628m)っていう峠を越える山道があって、それが“国境”だった。敦賀側にも宿場があって、今庄から敦賀に抜けるルートは平安時代から使われていたといわれています。

ピーク時には50軒くらい宿があったそうです。
いまはひっそりしてますが、その静けさと“盛者必衰”のような歴史がね、すごく味わい深いなと思うんです。
タイムスリップ感というか…?
そうそう。歩いてると、なんとも言えない懐かしさがあるでしょ?
舗装されすぎてない道、石畳、昔の蔵、空き家に下がった古い表札とか…なんというか、“時間の速度”が全然違う。
静かだけど、人の生活が確かに残ってる。それが今庄の魅力だと思ってます。
地酒もおすすめですよね?
今庄には昔から酒蔵があって、地元の米と水で作ってるんです。登山後に買って帰って、ゆっくり飲むのもいいし、地元の人と話しながら一杯っていうのも旅っぽい。
まさに「山・町・人・味」全部そろってますね。
そうですね。今庄は観光地っていうより“生活の中にある旅先”という感じ。派手さはないけど、心に残る。そんな場所を探してる人には、ぴったりだと思います。

このような話を聞いたあと、「これは、行ってみるしかない」と電車(はぴライン)に乗って旅に出ました。

今庄駅から、山へ。 藤倉山〜鍋倉山、駅発着のぐるり周回コース

今庄駅に降り立つと、まず感じるのは町の静けさ。駅のまわりは車通りも少なく、聞こえるのは鳥の声と風の音くらい。
少し歩けば、かつて北国街道の宿場町として栄えた「今庄宿」の町並みが現れます。歴史のある町の風情を楽しみながら、登山口となる弘法寺まで向かいます。

いよいよ登山の時間の始まりです。
今回歩いたのは、今庄駅を起点に、藤倉山から鍋倉山をめぐって観音堂へと下山し、今庄宿へ戻るという約7.4kmの周回ルート。
累積標高は約711m、所要時間はおよそ4時間から5時間程度(自分は2時間50分で行けたので慣れてれば早く行けます)。気軽に行けるルートと言えど、山道なのでしっかり準備はしましょう。

登山道は、ところどころ苔むした石段や新緑の香る森林が続き、心地よく感じられました。

登りはじめて30分ほどで、空気が一段と澄んでくるのがわかります。
坂をひとつ越えるたび、背中に汗が滲みますが、それすらも心地よい。鳥の声と木の葉の音に包まれながら、ただ足を前へと運びます。

藤倉山から鍋倉山へと縦走する稜線では、右手に集落と鉄道の線路を見下ろしながら、穏やかな尾根道が続きます。
視界が開けるスポットは少なめですが、そのぶん静かな山の時間に集中できる贅沢さがありました。

《コースタイム(参考)》

  • 総距離:約7.4km

  • 所要時間:4時間程度(休憩含む)

  • 累積標高:711m

  • 難易度:中程度(登山靴・飲料は必携)

登山道は整備されすぎておらず、落ち葉や苔むした石段、杉林のなかを歩く区間もあります。標高差はありますが、距離が短めなので、登山初心者でも時間に余裕をもてば問題なく歩けるルートです。

福井は豪雪地帯のため、特にブナ林は雪の重みで根曲がりになっています。

藤倉山を越え、燧ヶ城趾まで下り、そして観音堂まで下りてきます。

山を下りたら今庄そばを。

山を下りて今庄宿の町並みに戻ると、ちょうどお昼どき。
もちろん今回、事前に山本店長にも聞いていた今庄そばを食べようと思っていました。今庄そばは、福井の中でも“つなぎを使わない十割そば”が多く、噛んだ瞬間にそばの香りがふわっと広がるのが特徴。
町なかには老舗から隠れ家的なお店まで点在していて、今回は駅近くの静かな店構えの一軒に立ち寄りました。

注文したのは、もちろん福井名物の「おろしそば」。冷たい水でしっかり締められたそばは、歯ごたえも香りも抜群。すりおろした大根の辛みが、登山の火照りをさっぱりと癒してくれます。

旅の途中で、こうして地元の味をいただける時間は、やはり特別なものですね!
「このそばを食べるために、また山に登りたくなる」――そんな気持ちにすらなりました。

宿場町の一角で出会った、“最後の一本”

そばでひと息ついたあとは、町の風情を味わいながら、もうひとつの目的地へ。
今庄宿の路地裏を歩いていると、古い木造の店構えに、杉玉がある建物が目に入りました。
「畠山酒造」。創業180余年の、地元に根ざした酒蔵です。

店先の暖簾をくぐると、古民家そのままの空間に、地酒が昔ながらの帳場に並び、まるで時間が止まったような空気に包まれました。

店員さんに「おススメの酒はありますか?」とたずねると、そっと差し出してくれたのは、淡いブルーのラベルが涼やかな一本――
純米生原酒『雪きらら』の一番しぼりでした。

「ちょうど今朝、最後の一本になったところなんですよ」
そんな言葉に背中を押されて、迷うことなく手に取りました。
日本酒における一番しぼりとは最初に搾ったお酒、つまり、もろみを搾る工程で最初に出てくる部分を指します 

旅の最後に、山とそばと酒がそろったことで、心の中にふっと満ちるものがありました。

風情溢れる今庄宿へ

豪華な観光地じゃないけれど、静かな山と歴史ある町が、ちゃんと迎えてくれる場所――それが今庄でした。
駅を降りて、そのまま歩いて登れる山。下りたあとは、地元のそばと酒でひと息。
そんな“肩肘張らない旅”を探している方に、今庄はきっとぴったりです。
福井に来たなら、ローカル線に揺られて、ぜひこの町へ足を運んでみてくださいね!

HIR☺︎

福井生まれ福井育ち生粋の福井人。写真歴は20年以上。嶺北奥越を中心に福井県内の風光明媚な名勝奇勝を撮り歩いてます。

HIR☺︎

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