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【ふく旅 酒トレイル】福井の酒蔵をめぐる「#03 福井市・田嶋酒造」 福井の食に合う酒を造る福千歳

「福井の食に合う酒を造る」──田嶋酒造・福千歳 7代目が語る、“福井の酒”の現在地

【ふく旅 酒トレイル】福井の酒蔵をめぐる「#03 福井市・田嶋酒造」 福井の食に合う酒を造る福千歳

HIR☺︎

福井生まれ福井育ち生粋の福井人。写真歴は20年以上。嶺北奥越を中心に福井県内の風光明媚な名勝奇勝を撮り歩いてます。

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HIR☺︎

酒は“単体で完結しない”。食があって初めて完成する。

足羽山の麓。静かな住宅街の中に、創業1849年・176年の歴史をもつ田嶋酒造があります。

代表銘柄「福千歳」は“福が千歳続くように”と名づけられ、地元に愛されてきた福井の酒。


ですが、7代目蔵元・田嶋さんの言葉には、「美味しい食のために酒を造りたい」という“消費者目線の発想”がにじみ、ぐっと心を掴まれました。

「山廃なのに飲みやすい」は、福井の水のおかげ。

田嶋酒造の酒造りについて教えてください!
田嶋酒造と言えば山廃のイメージがありますが、山廃仕込みって、ざっくり言うとどんなお酒なんですか?
一言で言えば、“蔵の天然乳酸菌と酵母を育ててつくる酒” です。
基本は乳酸を添加しますが、山廃はそれを使わず、蔵に住んでいる菌が自然に育つのを待つんです。
自然に任せるぶん、難しそうですね。
乳酸菌が増えるまで数日~数週間かかるので、温度を微調整しながら
“良い菌だけが育つ環境づくり” を徹底します。これが地味に大変なんですよ(笑)
福千歳は山廃なのに 軽やかな印象がありますね。
福井の水は軟水なので、発酵が穏やかに進むんです。一般に山廃は濃厚でしっかりした味わいになりやすいのですが、軟水で仕込むと重すぎない。コクがあるのに飲みやすい、バランスの良い味になる。これはうちの大きな強みですね。

「食べ物が主役で、酒はその“アシスト”でいい。」

日本酒って“それ単体で完結させるもの”じゃないと思うんです。
食べ物と合わせるから面白いし、食事がもっと美味しくなる。
だから僕は常に“食を楽しむ消費者側の視点”で酒を考えているんです。
まさに“ペアリング発想の酒造り”ですね!
そうですね!たとえば「鯖純米」は、焼き鯖や鯖寿司をもっと美味しくするために造った酒です。
塩気・脂・旨味の強い福井の海産物に合わせ、後味で引き締める酸味とキレを持たせています。冬は「蟹純米」を越前蟹に合わせて欲しいですね!
越前そばに合う「蕎麦純米」もあって東京などでも良く売れています
福井の食文化に合わせて酒を造る、という発想が面白い。
地元の食を、地元の酒で完成させられたら最高だと思っています。

ピュアライスワインは「コシヒカリを世界で飲んでほしい」という挑戦。

  • 若狭の小鯛の笹漬けにとても合うピュアライスワイン
革新的な取り組みとして、ワイン製法の「ピュアライスワイン」がありますね。
学生時代、卒論でライスワインをテーマに研究し苦節26回の試行の末にできたのがピュアライスワインです。僕の生まれた【福井のコシヒカリ×ワイン酵母】のコラボレーションで、甘酸っぱいけどスッキリと飲みやすい白ワインタイプのお酒(純米酒)が誕生しました。使用するのは90%精米の“コシヒカリ”。 実はコシヒカリは福井発祥なので、「福井の米を世界に届けたい」という気持ちが根っこにあります。
味わいは、まさに“白ワイン”の雰囲気ですね。米がベースだから日本食に積極的に合わせたくなる!
そうなんです。料理との合わせは白ワイン感覚で。
カルパッチョや若狭の小鯛の笹漬け、親鳥“じゅんけい”の炭火焼なんかがすごく合いますよ。

伝統の山廃 × 福井の軟水 × 現代の食の嗜好 この3つで“ちょうどいい”日本酒ができる。

田嶋さん:山廃って、濃くて重たいというイメージを持たれがちですが、福井の軟水と合わせると“しっかり×やわらかい”という独特のバランスになります。山廃の純米「圓」は、海外でも評価が高いです。

複雑さがありながらも、食を邪魔しない。そこを大切にしています。

福井産米100%──酒米でも“福井の食文化の一部”でありたい。

  • 浸水中の酒米
酒米はすべて福井産とのことですが、理由は?
シンプルに、“地元の米が好きだから”です(笑)。
数年前に開発された「さかほまれ」は旨味と甘味のバランスがよく、造り手として扱いやすい。「越の雫」や「五百万石」など酒造りに良い米が多くある。
福井で採れた米で、福井の水で、福井の食に合う酒を造る。それがいちばん自然なんです。

福井駅周辺で買える!そして「持ち帰りやすさ」がうれしい

県外客が買いやすい場所はどこになりますか?
福井駅構内のくるふ福井「おさけとワイン みずもと」、ハピリン内のお土産店、西武地下のショップなどですね。持ち帰り易い四合瓶の取扱いも多いですし、さらに「蟹純米」は300mlがあるので、旅行でも持ち帰りやすいですよ。

熟成・越前焼・泡盛。 「まだ誰もやっていないこと」に挑む。

これから挑戦してみたいことは?
越前焼の甕で熟成させた酒を造っています。
あとは福井の3つの酒米(五百万石/さかほまれ/越の雫)をすべて使った純米酒、泡盛を添加した大吟醸なども試作しています。
オーク樽での熟成にも挑戦中ですね!沖縄の泡盛は米でできているので日本酒と合わせるという発想で「SAKE × AWAMORI 大吟醸 」という商品もあります。沖縄で学生時代の先輩が作った泡盛とのコラボレーション作品です!
  • 泡盛とのコラボ酒も
“食と合わせて面白い酒”をもっと作りたい。
それが今も一番のモチベーションです。

読者へのメッセージ

福井に来られる方にむけてメッセージをお願いします!
日本酒は“誰と、何を食べるか”で味が変わります。
福井に来て、魚や発酵食や地の料理と一緒に飲めば、きっと驚いてもらえると思います。
旅行の思い出の一部として、ぜひ地元の料理とセットで味わってください!
福井の食を、福井の酒で完成させる。
まさに“酒トレイル”の醍醐味ですね!

料理と合わせることを前提にした田嶋酒造の酒造りは、“地酒は地域の食文化そのものである”ということを改めて思い出させてくれました。

焼き鯖、鯖寿司、越前がに、小鯛の笹漬け、へしこ── 福井の食を愛する人にこそ飲んでほしいお酒です。

HIR☺︎

福井生まれ福井育ち生粋の福井人。写真歴は20年以上。嶺北奥越を中心に福井県内の風光明媚な名勝奇勝を撮り歩いてます。

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